江戸川大学では、3年次に所属したゼミナールで専門研究を行い、4年次には卒業論文を執筆します。各ゼミの指導教員は卒業論文のうち優秀な論文を優秀論文として推薦します。優秀論文発表会では、優秀論文を執筆した学生がプレゼンテーションを行います。

2022年度 優秀論文

「少年漫画における、表現の自由と規制」松本 響也さん

<論文の概要>
漫画アプリの普及にともない、少年漫画の読者層は、もはや少年だけではなくなっている。また、コロナ禍を経て、海外の読者も爆発的に急増している。今後も少年漫画は「少年に向けた物語」を展開していくことは変わらないが、少年以外の読者、海外の読者への配慮が欠かせなくなっている現状を分析。また国内外での表現規制や炎上事例を紹介し、読者層と社会情勢の変化から考える、「これから意識するべき漫画表現」を明らかにした。

<評価のポイント>
日本のみならず米国での「表現の自由と規制」の現状について調査し、さまざまな事例を紹介。また、大手出版社で働く現役の漫画編集者2名に取材を敢行し、制作現場の肉声を織り込むなど、事実の積み重ねを複合的におこなった点を高く評価した。さらに今後、少年漫画に求められる表現方法を明確に導き出した点も評価したい。

「少年漫画における、表現の自由と規制」要約

「サブスクリプション・サービスにおける無料お試し期間の価値について-動画配信サービスの顧客獲得-」辻 賢斗さん

<論文の概要>
日本におけるサブスク動画配信サービスは、三菱UFJ(2019)の調査によると利用率、解約率ともに最も高い世代は20代であった。その理由として、张, 坂下, (2016)は、「価格に対する不満」を挙げていたが「無料お試し期間」については検討されていなかった。 そこで、本論文では、20代を中心に「無料お試し期間」の有効性について質問票調査を行い(n49)、その結果、有料契約者の80%が無料お試し期間を活用し、33%が無料お試しから有料契約へ移行していることを明らかにした。

<評価のポイント>
本論文は、昨今成長が著しいサブスクリプション・サービスによる動画配信サービスにおける無料お試し期間設定の有効性について事業者側の視点から明らかにしようした意欲的な論文である。調査サンプル数は多いとは言えないが、対象を20代に集中させたことで、無料お試し期間は有効であるという結論には一定の説得性があると評価したい。

「サブスクリプション・サービスにおける無料お試し期間の価値について-動画配信サービスの顧客獲得-」要約

「高校生が抱える〝見えない貧困〟食生活問題の解決に校内居場所カフェが果たす役割」竹田 莉奈さん

<論文の概要>
校内居場所カフェとは、学校にも家庭にも居場所がないと感じている生徒のため、地域の支援団体等が学校内に彼らがくつろげる場所を作ろうという活動で、10年ほど前から全国に少しずつ広がってきた。本論文は、千葉県内に初めて校内居場所カフェを作る活動に2年間にわたって密着取材し、それが、家庭の事情等で1日3食が十分に食べられないという食の問題を抱える生徒たちにどのような影響をもたらすか、先行事例である大阪府立西成高校での取材や、自らの居場所カフェ運営スタッフへのインタビュー等を通じて分析したもの。

<評価のポイント>
もともと高校生たちの貧困による食の問題は、教員や外部の人間からは覚知されにくく、“見えない貧困”とも呼ばれているが、コロナ禍によってそれがさらに拡大したとされている。そうした中で、学生自身が立ち上げから参加した校内居場所カフェの実践を通じ実感したことを土台に、周辺を幅広く取材し、問題の本質により迫る実証的研究論文となった。

「高校生が抱える〝見えない貧困〟食生活問題の解決に校内居場所カフェが果たす役割」要約