江戸川大学では、3年次に所属したゼミナールで専門研究を行い、4年次には卒業論文を執筆します。各ゼミの指導教員は卒業論文のうち優秀な論文を優秀論文として推薦します。優秀論文発表会では、優秀論文を執筆した学生がプレゼンテーションを行います。

2025年度 優秀論文

「鉄道線路が津波避難に及ぼす影響 ―千葉県南房総市の事例から―」北見 隼人さん

<論文の概要>
近年、鉄道線路が津波発生時の避難の阻害要因になるのではないかという研究に注目が集まっている。そこで、千葉県での状況を調査したところ、最大規模の被害想定では15市3町1村で、線路を越えた津波の襲来が想定されていることがわかった。このうち、最大の津波が想定される南房総市でのフィールドワークや防災担当部署、住民への聞き取り調査、鉄道会社へのアンケート調査を行い、現場の実態や課題を具体的に明らかにした。

<評価のポイント>
複数の津波の被害想定から何を調査すべきかを取材で明らかにし、データ解析、フィールドワーク、自治体、住民への聞き取り調査、JR東日本への取材と、複数の手法を用い、多角的な調査を行った実証的な研究である。現場の生の声を聞き、他の地域と比較して、どんな対策が必要なのか自分なりの考えを深めている点も評価できる。

「鉄道線路が津波避難に及ぼす影響 ―千葉県南房総市の事例から―」要約

「原画展における原画の扱い方と理想」武田 仁美さん

<論文の概要>
近年、漫画やアニメの原画を展示する「原画展」は、単なる資料展示からファン体験型イベントへと発展し、文化的・経済的価値を持つ場として注目されている。本論文は、原画展の歴史的変遷と現在の運営構造を整理したうえで、主催企業や出版社へのインタビュー、来場経験者へのアンケート調査を通して、原画展の運営実態と来場者ニーズを分析した。その結果を踏まえ、文化資産としての原画を保護しつつ、ファン体験を高める「理想の原画展」のあり方を提案している。

<評価のポイント>
原画展の運営企業や出版社への独自取材、さらに来場経験者へのアンケート調査を組み合わせ、原画展の舞台裏と来場者ニーズを多角的に分析した点が高く評価された。また、歴史的変遷の整理に加え、「理想の原画展」という具体的な企画案を提示しており、研究成果を実践的提案へと結びつけている点も優れている。

「原画展における原画の扱い方と理想」要約

「青年期における「蛙化現象」の再定義と心理的背景 ―SNS時代の情報処理特性と恋愛感情の変容に着目してー」矢野 真菜さん

<論文の概要>
本研究は、若者の間で広く使われている「蛙化現象」という言葉が、本来の心理学的定義とは異なる意味で用いられている点に着目し、その意味変化の背景を検討したものである。江戸川大学の学生を対象にアンケート調査を実施し、「蛙化現象」の認識とSNS利用行動との関係を分析した。その結果、現代の蛙化現象は自己肯定感の低さによる拒絶ではなく、SNS時代の情報環境の中で形成される自律的な価値判断による早期の線引き行動として理解できる可能性が示された。

<評価のポイント>
SNS時代における青年期の恋愛を象徴する「蛙化現象」を題材に、大学生へのアンケート調査を通してその理解の実態を分析した点が評価できる。特に、動画の倍速視聴という現代的なメディア利用行動と恋愛における心理的反応の関係を結び付けて考察した点は独創的であり、新しい視点から若者の対人関係を捉えようとした意欲的な研究である。

「青年期における「蛙化現象」の再定義と心理的背景 ―SNS時代の情報処理特性と恋愛感情の変容に着目してー」要約

「クエンティン・タランティーノの不良性感度 ~70年代東映作品との共鳴~」佐藤 駿成さん

<論文の概要>
タランティーノ作品群の物語構成、キャラクター、暴力表現を70年代東映の「不良性感度」の視点から分析。エクスプロイテーション映画に傾倒していた彼は、これら東映作品も好んで視聴。そこで彼が「不良性感度」に共鳴した可能性について、彼の作品と東映作品の共通点を精査し、「錯時法」「女性像」「過激な暴力表現」があると分析。これらが彼の作品に通底するテーマとして存在することから、彼は「不良性感度」に共鳴していると論じている。

<評価のポイント>
「不良性感度」は、当時東映の岡田茂社長が監督たちに求めていた感性である。このキーワードで、タランティーノの作家分析を行った論文は、斬新で評価できる。女性像と暴力描写は彼の作品群と膨大な東映作品を精査し得ている。時系列を排除した錯時法は、日本映画の二本立て上映にインスパイアされたという仮説も興味深い。

「クエンティン・タランティーノの不良性感度 ~70年代東映作品との共鳴~」要約