江戸川大学では、3年次に所属したゼミナールで専門研究を行い、4年次には卒業論文を執筆します。各ゼミの指導教員は卒業論文のうち優秀な論文を優秀論文として推薦します。優秀論文発表会では、優秀論文を執筆した学生がプレゼンテーションを行い、最も優秀な論文が選考されます。

2017年度 優秀論文

「マンガ・アニメの社会的意義の考察並びに正義の変容について」
佐藤翼さん(宮崎孝治ゼミ)


<論文概要>
第1章 概論
マンガ・アニメは今や文化であり、一つの社会現象である。その正義感は年代とともに変容している。社会学的にその役割を考察した。
第2章ジョン・ロールズとマイケル・サンデルから読み解く正義一日本はそれをどう受け入れたか一
「ルールに従って公正に扱うことを求めることが正義である」との西欧的正義感を明確にした。また、 その正義論は近年日本に入り、マンガ・アニメが普及の一つの手段となったことを明らかにした。
第3章 日本における正義
日本の正義は主観の正義であり、ジャスティスの観念はなかったと考察した。
第4章 社会現象としてのマンガ・アニメの影響力
マンガ・アニメは経済効果を生み出し、文化芸術性を高め、ストレス社会の緩衝材ともなるなど、多様 な役割を果たしていることを明確にした。
第5章マンガ・アニメの中での正義の変容
年代ごとにマンガ・アニメの正義の変容を、社会背景の変動とともに追っていったところ、日本的正義 から西欧的公正の正義へと変わる様子がわかった。
第6章 今後のマンガ・アニメの正義感の行方
今後のマンガ・アニメの正義感には、作者の責任と読者の見識が必要となるという考察を得た。
第7章 まとめ
「正義とは何か」との解答は難しいが、「生命の尊厳」というものではないかと考察した。

<選考のポイント>
「正義」という難題に果敢に挑んだ挑戦的論文です。「正義」をロールズとサンデルの考え方の比較を通して捉え、社会現象として漫画・アニメの影響力を明示しつつ、そこで表現される「正義」の時代変容を明らかにし、自らの正義観を提示しました。難解な哲学書を読み解き、論理的に構成を考え、高い文章力で全編書き抜いた姿勢には素晴らしいものがありました。

「ランサムウェアが社会に与える影響」
笹本一輝さん(八木徹ゼミ)


<論文概要>
近年、ランサムウェアと呼ばれるコンピュータウィルスが注目されている。ランサムウェアとは、「ransom」(身代金)と「software」(ソフトウェア)を組み合わせた造語で、コンピュータ内部のデータを暗号化し、ユーザがデータを利用できなくした上で、暗号化の解除のために身代金を要求するというものである。本論文ではランサムウェアの被害事例やランサムウェアの特徴、歴史的経緯、必要となる対策や社会への影響について考察した。

<選考のポイント>
笹本君は、オリジナルのスマホアプリを作るなど、コンピュータやその関連技術に興味を持ち、かつ自分で試さずにはいられない好奇心の強い学生です。そんな彼が、持ち前の積極性を発揮して調査を行い、丹念に考察を重ねました。時間をかけて一つの事にじっくりと取り組み、仕上げたことが選考のポイントです。

「自動車のしくみ及び自動車の環境問題」
大鹿剛志さん(高田正之ゼミ)


<論文概要>
この論文では、まず自動車とはどんなものであるのかを特徴的な部品を取り上げて解説し、その次に自動車を利用する上で生み出される汚染物質の現状と、なるべく被害を軽減 するために国・行政、自動車メーカーはどんな施策を行っているのか、また個人各々はどんな対策をすべきなのかを考え、自動車を利用する者としての利用方法を見直す。
第1章では、乗用車およびトラック・バスなどの有用性をはじめ、国・行政の排ガス規制や自動車メーカーのエコカー対策の大切さ、個人対策の重要性について論じている。
第2章では、自動車のしくみ・構造として、「ボディ」、「エンジン」、「トランスミッション」、「ブレーキ」、「ステアリング」、「サスペンション」、「タイヤホイール」などのもっとも基盤となる部品を取り上げ、分かりやすく解説している。
第3章では、自動車を利用するうえで生じる「大気汚染」、「塗装による人体・環境への影響」、「車の騒音・振動およびその 他による人々・環境への影響」の3つに分けて論じている。大気汚染の問題について、主に「地球温暖化」、「温室効果ガス」、「酸性雨」、「光化学スモッグ」を取り上げている。
第4章では、日本の自動車における環境対策の歴史をはじめ、国・行政がすでに行っている排ガス規制の取り組みや、自動車メーカーが普及促進をするハイプリッドカーの種類や、 プラグインハイプリッドとは何か、アイドリングストップの技術等、自動車利用者が心がけるべき個々の対策を論じている。
第5章では、自動車でもっとも懸念されている環境問題は「大気汚染」であると認識し、それを解決するにあたって排ガス規制などの施策やエコカーのほかに、自動車を利用する 人々が環境を汚しているという自覚を持ち、私が考える運転するうえで心がけるべき個人対策を一人ひとりが取り組むことで、大気汚染や人体被害を減少することに貢献することができると考察した。また、今後注目の燃料についてまとめ、今すぐに取り組むべき個人対 策、環境問題における今後の課題についても論じている。

<選考のポイント>
大鹿君は早いうちから就職を意識して行動し、地道に就職活動を続けて希望した自動車関連企業に内定しました。その過程で卒業論文のテーマも日頃から気になっていた自動車の環境問題にしました。自分の関心事を掘り下げて仲間や教員と議論して論文にまとめるという当然のことが当然のこととしてできたのが選考ポイントです。

その他の優秀論文は以下のとおりです。
ビッグデータ時代の個人情報保護法 山下瑞生さん(玉田和恵ゼミ)
Minecraftを用いた学校教育と21世紀型スキル 藤井日菜乃さん(玉田和恵ゼミ)
日本におけるスーパーマーケットの変遷 平野裕也さん(松村豊子ゼミ)
慢性的なインターネット利用が及ぼす睡眠への影響 波形航平さん(山口敏和ゼミ)
ソニーのオリジナリティと限界~アップルとの比較から~ 鶴巻樹也さん(廣田有里ゼミ)
東京メトロにおける訪日外国人とWi-Fiの現況と今後 武本巧さん(神部順子ゼミ)
シェアリング・エコノミーによる日本社会の発展 鹿角準さん(神部順子ゼミ)