江戸川大学では、3 年次に所属したゼミナールで専門研究を行い、4 年次には卒業論文を執筆します。各ゼミの指導教員は卒業論文のうち優秀な論文を優秀論文として推薦します。優秀論文発表会では、優秀論文を執筆した学生がプレゼンテーションを行い、最も優秀な論文が選考されます。

2018 年度 優秀論文(社会学部人間心理学科)

最優秀論文 山口 あす香さん
「自転車事故に関連する要因の心理学的研究 -運転行動の自己評価とシミュレータ動画に対する評価を用いて-」


<論文概要>
この研究では、質問紙による自転車運転行動の自己報告とともに、シミュレータ動画内の「違反への気づき」を測定し、それらの変数と自転車事故との関連を検討しています。解析の結果、自転車運転者は信号無視を危険だと認識しているが、動画内の左折時信号無視を見逃す割合の高いことが示されました。さらに、ロジスティック回帰分析の結果、動画内の信号無視に気づかない者や、交差点における優先車妨害の危険性を低く評価する者では、自転車運転中に事故を起こしそうになった経験の多い事が明らかとなりました。

<選考のポイント>
この研究においては、運転行動に対する自己評価の歪みについても検討するため、客観的な指標として「動画内の違反への気づき」を取り上げています。このように認知実験的変数を主観的自己評価に基づく変数とともに、積極的に研究に取り入れた挑戦的な研究手法が高く評価されました。また、大量のデータを纏めあげ、聴衆に理解しやすく伝えたプレゼンテーションの技術も高いレベルにあるといえます。

「自転車事故に関連する要因の心理学的研究 -運転行動の自己評価とシミュレータ動画に対する評価を用いて-」(要約)

二位 高倉沙依さん
「睡眠の質に関する誤った情報がその後の認知機能・気分・眠気に与える影響」


<論文概要>
「あなたは昨晩よく眠れていませんでした」と睡眠の質に関する「偽の情報」を伝えられたら、認知機能や気分は影響を受けるのだろうか?この研究は、そのような疑問を実験的に検討した研究です。参加者は実験室内で夜間睡眠をとり、その間の睡眠脳波(ポリグラフ)が計測されました。翌朝、「ポリグラフによって計測された睡眠の質が悪かった」と偽の情報を伝えられた参加者では、その情報が実際の睡眠ポリグラフの結果とは無関係であるにも関わらず、認知課題前の活力が減衰し課題中の反応時間も遅くなっていました。

<選考のポイント>
睡眠への関心が高まり、様々な睡眠計測機器やサービスが一般向けに販売されるようになってきましたが、それらの中には、その計測結果が疑わしいものも少なくありません。この研究の結果は、信頼性の低い機器の睡眠への悪影響を示唆するものであり、社会的インパクトも大きいと言えます。また、発表会におけるプレゼンテーションも非常に高い評価を受けました。

「睡眠の質に関する誤った情報がその後の認知機能・気分・眠気に与える影響」(要約)

三位 中尾花奈子さん
「大学生における衝動性が意欲低下および適応感に及ぼす影響に関する研究」


<論文概要>
中尾花奈子さんは、衝動性が意欲低下を媒介して適応感の低さに影響を及ぼすという、新たな因果モデルを考案し、男女大学生 224 名を対象に質問紙調査を実施してモデルの妥当性を実証的に検討しました。尺度の信頼性を確認したうえで、偏相関分析およびパス解析を行い、男女に共通して「衝動性の高さ」→「意欲低下」→「適応感の低さ」という想定した通りの因果関係を裏付ける結果を得ました。

<選考のポイント>
衝動性、意欲低下、適応感の 3 変数の関連性にアプローチした先行研究を丹念に概観し、そこで提起された因果モデルの矛盾点を論理的に指摘したうえで、大学生における衝動性の高まりが就学意欲の低下をもたらし、ひいては大学生活への適応を阻害するという因果モデルを考案し、これをパス解析により実証した点が高く評価されました。加えて、発表会における丁寧で分かりやすいプレゼンテーション技術も高い評価を受けました。

「大学生における衝動性が意欲低下および適応感に及ぼす影響に関する研究」(要約)