江戸川大学では、3年次に所属したゼミナールで専門研究を行い、4年次には卒業論文を執筆します。各ゼミの指導教員は卒業論文のうち優秀な論文を優秀論文として推薦します。優秀論文発表会では、優秀論文を執筆した学生がプレゼンテーションを行い、最も優秀な論文が選考されます。

2025年度 優秀論文

最優秀 長竹 萌花さん 
「眠気が色明度記憶に与える影響—色の偶発再認課題を用いた検討—」


<論文概要>
睡眠が記憶に与える影響については、これまでにも多様な研究が存在しています。しかし、色の記憶を対象として行われた研究はほとんど存在しません。そこで、この研究では課題実施時の眠気が色の明度(明るさ)記憶に与える影響をWeb上で認知課題を実施し検討しました。194名から得られたデータを解析したところ、眠気の強さと偶発再認課題成績との間に有意な関連は認められず、色の明度記憶は比較的眠気に頑健である可能性が指摘されました。

<選考のポイント>
明度・彩度・色相という色の三属性のうち明度のみを操作した刺激を丁寧に作成するなど、Webでの課題実施という限界のある手法を用いつつも、できる限り厳密に参加者の記憶パフォーマンスを測定しようとした試みは高く評価できます。また、本研究の意義を目撃証言とも関連させて分かりやすく説明したプレゼンテーションの内容も高く評価されました。

「眠気が色明度記憶に与える影響—色の偶発再認課題を用いた検討—」要約

二位 清田 歩夢さん
「過敏性腸症候群と睡眠の質・量・位相との関連」


<論文概要>
本研究は、成人を対象にインターネット調査を通じて過敏性腸症候群(器質的異常が認められないにも関わらず腹痛とそれに伴う下痢や便秘を繰り返す機能性腸疾患)症状と睡眠の質・量・位相との関連を検討したものです。分析の結果、睡眠の量(睡眠時間や睡眠不足度)、位相(睡眠中央時刻やその平日・休日差)は過敏性腸症候群症状があることと関連していませんでしたが、睡眠の質(不眠症状)は有意な関連が認められました。この成果は、過敏性腸症候群の理解や対策・支援について重要な基礎資料を提供すると考えられます。

<選考のポイント>
先行研究を丁寧にレビューし、研究のスタンドポジションと臨床的意義を手堅く整理している点、論理的でわかりやすく、得られた結果についての洞察に富んだ考察を展開している点、明快で聴衆にわかりやすいプレゼンテーションが高く評価されました。

「過敏性腸症候群と睡眠の質・量・位相との関連」要約

三位 ネミ えりかさん
「異文化理解および社会的寛容度が社会的排斥経験の主観的反応に及ぼす影響」


<論文概要>
本卒業論文は、大学生を対象に異文化への理解や社会的寛容さといった個人の考え方の違いが、社会的排斥を経験した際の感情の受け止め方にどのように関係するのかを検討したものです。具体的には、参加者が社会的に排斥される状況を実験的に再現し、排斥経験後の感情の変化と心理特性との関連を分析しました。その結果、差別意識が低い学生ほど排斥による惨めさを強く感じやすい傾向が示され、さらに社会的寛容度が高い場合にはその感情が緩和される可能性が示唆されました。これらの結果から、社会的排斥の受け止め方には個人の文化的態度や社会的寛容度が影響することが示唆されました。

<選考のポイント>
社会的排斥という心理学的テーマを扱いながら、異文化理解や社会的寛容度といった社会的文脈と結びつけて検討している点が本研究の特徴です。実験課題と質問紙を組み合わせた研究デザインにより、排斥経験の受け止め方に関わる個人差を丁寧に分析しています。差別意識の低さと排斥時の感情の強さという興味深い結果を、認知的不協和の観点から考察している点も評価できると思います。

「異文化理解および社会的寛容度が社会的排斥経験の主観的反応に及ぼす影響」要約