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2026.03.03

人間心理学科・石橋美香子講師らの共著論文が『Frontiers in Robotics and AI』に掲載

石橋美香子 講師

江戸川大学社会学部人間心理学科の石橋美香子講師(専門分野:発達心理学)、東京大学の新屋裕太特任助教、大阪大学の吉川雄一郎教授・石黒浩教授、立命館大学の板倉昭二特別招聘研究教授らの研究グループは、社会的ロボット「CommU(コミュ―)」を用いて、18〜24か月の乳幼児を対象に、ロボットからの賞賛が子どもの課題への粘り強さを高めることを実証しました。本研究成果は2月27日(金)に、国際学術誌『Frontiers in Robotics and AI』に掲載されました。

近年、社会的ロボットは教育・保育分野を含む子どもを取り巻く環境での活用が進んでいます。しかし、4歳未満の乳幼児を対象に、ロボットからの社会的働きかけが行動に及ぼす影響を実証的に検討した研究はほとんどありませんでした。本研究では、高さ約30cmの小型でシンプルな外観をもつ子ども型社会的ロボットCommUに着目し、乳幼児にとって社会的プレッシャーの少ない存在であるCommUからの「賞賛」が、課題への取り組み行動にどのような影響を及ぼすのかを検討しました。

その結果、CommU・人間のいずれのエージェントであっても、「賞賛」を受けた子どもは、賞賛のない条件に比べて、課題により長く取り組むことが明らかになりました。また、エージェントを見つめる時間が長い子どもほど、課題への粘り強さが高い傾向にあることも示されました。このことは、乳幼児期においてもロボットを社会的存在として捉えている可能性が示唆されます。本研究は、社会的ロボットとの相互作用が、乳幼児期の動機づけや学びを支える可能性を示した実証研究であり、今後の教育・発達支援におけるロボット活用への貢献が期待されます。

実験イメージ図:達成できない課題でも取り組もうとしている子どもと、声かけをする「CommU」

■石橋講師のコメント
1~2歳の子どもたちが、生まれて初めてロボットに出会う場面を想像してみてください。犬や猫でもなく、ヒトでもない存在。しかも、自分と同じくらいの大きさで、言葉を発する「動く物体」に出会うのです。これは子どもにとって、それまでに形成してきた概念が大きく揺さぶられる瞬間だといえます。

子どもの好奇心に関する研究では、「新奇すぎず、慣れすぎてもいない」、つまり子どもにとって中程度(intermediate)の対象に対して、最も強く注意や興味が向けられることが示されています(Kidd et al., 2012)。ここで重要なのは、「子どもにとっての」という点です。子どもがこれまでどのような環境で育ち、どのようなモノに囲まれ、何を好んできたのかという経験の履歴は、一人一人異なります。そのため、ロボットに出会った瞬間の反応もさまざまです。見た途端に泣き出す子もいれば、興味津々で自ら近づいていく子もいます。こうした多様な反応は、それぞれの子どもがこれまでに築いてきた経験の違いを反映しているのです。将来的には、子どもが日々更新していく概念や行動の変化に応じて、その子にとって最適(optimal)な関わり方を柔軟に調整できるロボットの開発が進んでいくのではないかと考えています。