社会学部
人間心理学科
江戸川大学では、3年次に所属したゼミナールで専門研究を行い、4年次には卒業論文を執筆します。各ゼミの指導教員は卒業論文のうち優秀な論文を優秀論文として推薦します。優秀論文発表会では、優秀論文を執筆した学生がプレゼンテーションを行い、最も優秀な論文が選考されます。
浅岡章一准教授のゼミナールは、睡眠やヒトの認知機能の実験的研究、脳波などの精神生理学的指標を用いた研究を行っています。
<論文概要>
対人場面において、ヒトは自分の心の状態が他人に伝わっている程度を過大評価する傾向にあり、このような傾向は「透明性の錯覚」と呼ばれています。この研究では、この「透明性の錯覚」に与える断眠 (徹夜) の影響が検討されています。実験では2人1組の大学生20組を対象に、一方の参加者が選んだカードをもう一方の参加者が推測するという課題を実施しました。その結果から、課題中の自分の表情に感情が漏れ出てしまったと過大評価する程度が、眠気の強い状態で強くなることを明らかにしています。
<選考のポイント>
実験社会心理学的テーマである「透明性の錯覚」と、生理心理学・睡眠心理学的テーマである「眠気」を組み合わせることで生まれた本研究のオリジナリティが非常に高く評価されたと考えられます。発表会でのプレゼンテーションも素晴らしく、質疑応答の時間には非常に高いレベルのディスカッションが行われました。
なお、本研究の内容は、2016年5月に江戸川大学で開催される第35回日本生理心理学会大会でも発表されました。
中村真教授のゼミナールは、社会心理学をテーマに研究を行っています。身近な社会的行動のしくみを調査や実験に基づく実証的研究によって明らかにすることを目指しています。
<論文概要>
細谷美雪さんは、大学生201名を対象に質問紙調査を実施し、ゼミ担当教員のリーダーシップ・スタイルが大学生のゼミにおける勉学への意欲や充実感にどのような影響を及ぼすのかを実証的に示しました。また、その影響のあり方が大学生自身の自己のとらえ方(他者との調和を重視/他者から独立した存在であることを重視)によって異なる様相を呈することを仮説演繹的に実証しました。
<選考のポイント>
リーダーシップ・スタイルと集団成果の関係に関する社会心理学の先行研究を丹念に概観したうえで、これらの知見を大学におけるゼミ担当教員のリーダーシップと、大学生のゼミでの勉学への意欲・充実感との関連に援用して実証した点、そして、両者の関連が大学生自身の自己のとらえ方によって異なる様相を呈するという新たな知見を導いた点が高く評価されました。
その他の優秀論文は以下のとおりです。
・大学生における個人志向性・社会志向性PN得点と自殺志向との関連 高橋晴菜さん(T.M.Kellyゼミ)
・自閉症スペクトラム障がい者に対する認知について 佐藤楓さん(柴田良一ゼミ)
・苦情に対する誠意ある謝罪と性格特性との関連性について 飯田隆弘さん(薊理津子ゼミ)
・嫉妬の男女差-男はのろけに嫉妬し、女は裏切りに嫉妬する- 樋高 桃さん(福田和彦ゼミ)
・幼児の未知な動きへの同期性の変化 篠原樹里さん(野田満ゼミ)
・喪失対象想起時の感情とそれが喪失からの回復に与える影響について 大堀美月さん(室城隆之ゼミ)