vol. 133 2020年10月16日

人の心と、睡眠の関係を探る。
先生から学んだ、研究者としての姿勢。

4年間で印象に残っていることは?

  • 睡眠心理学Ⅰ・Ⅱ
    「睡眠」について、そのメカニズムや不足によって脳機能に与える影響など、専門的な知識を勉強できる講義です。睡眠の基礎知識を取り扱う睡眠心理学Ⅰは「睡眠改善インストラクター」という資格の必修講義にもなっており、講義で学んだ知識が資格の取得にも役立ちました。また、普段何気なくとっている睡眠について見直す良いきっかけにもなりました。
    睡眠心理学Ⅱでは睡眠心理学Ⅰで学んだ知識を基に、それを応用した実験的な研究手法などの考察を行っています。今年度の講義では、福田一彦先生、山本隆一郎先生、浅岡章一先生のお三方によるディスカッションも行われ、各研究者による議論は大変参考になりました。
  • 人間心理学実験演習・実習
    認知心理学や発達心理学といった各分野の実験、検査を2週間ごとに通年で体験していく講義です。1年生の頃の基礎固め的な講義とは異なり、実際に実験や分析、レポートの執筆といった一連の流れを体験できるところが新鮮であり面白さを感じました。その一方で、レポートの書き方について調べたり、関連した論文を読み漁ったりと1年間常に気が抜けない講義でもありました。心理学科の学生であれば、必ず名前が挙がる講義の一つだと思います。

心理学を学ぶ中で、とくに「難しい」と感じるのは?

  • 「科学」に基づいており、知識が必要
    一口に心理学といっても分野は様々ですが、どの分野であっても「科学」というものが根底にあります。科学に基づいた研究を行うためには、正しい知識を得て、研究に適した実験や分析をして、誰でも読みやすいレポートを作成することが必要です。そのためには、講義でしっかりと基礎知識をつけ、さらに、多くの学術論文(先行研究)を読む自主学習が必要になるので「難しい」と感じます。
  • ヒトが対象であること
    心理学はヒトを対象に研究を行いますが、その際には参加者の負担を減らす努力が必要になります。実験で用いる刺激(不快な画像を用いる場合)や質問の内容(プライベートな内容を尋ねる場合)は倫理的に許容させる範囲かどうか慎重に吟味することが重要です。また、実験内容のように直接的なものはもちろん、実験者の態度や実験のために拘束する時間等、配慮することが沢山あることも心理学の「難しい」ところだと思います。

人間心理学科の魅力は?

  • 実験の設備が充実している
    B棟の5階には人間心理学科の実験施設があり、贅沢な環境で研究を行うことが出来ます。睡眠・認知実験室内のシールドルームでは光の強さや室温の設定、外部からの音の遮断等、より高度な実験ができる環境を作り出せます。また、睡眠実験を行うためのベッドや脳波計等、専門的な機器が充実しています。そして、こうした実験設備について各分野の教員が専門的な知識を丁寧に指導してくれるため、研究好きの学生にとって魅力の詰まった学科だと思います。

ゼミの魅力は?

  • 実験設備を(おそらく)一番利用しているゼミ
    浅岡ゼミは、睡眠に関わる問題について実験的(一部例外を除く)に研究するゼミです。そういった意味では、心理学科の強みの一つである研究設備を利用する機会が多く、実験的な研究を行いたい学生にとってはたまらないゼミだと思います。
  • 論理的な思考が身につく
    実験を行うための仮説演繹的なプロセスが重要視されています。「なぜ」正しいのか、「どうして」そうなるのか、睡眠に関わる諸問題は脳のどの部位の活動が関与して引き起こされているのか、知識や理論に基づいた仮説から研究計画を立て実施しています。親には屁理屈になったと言われますが...「なぜ」「どうして」といった根拠を大事にする姿勢は、ゼミでの学習でより身についたと思います。
  • 倫理的配慮を欠かさないこと
    上記の「心理学を学ぶ中で、とくに「難しい」と感じるのはどんなことですか」という質問で書いたことは、担当教員である浅岡先生から厳しく教えられている内容です。特に、参加者の睡眠を制限する「断眠」の研究は、参加者の負担が大きく「ヘルシンキ宣言(世界医師会が作成した倫理的原則)」に記述される倫理観が強く求められます。研究者としての態度について、浅岡先生から感銘を受けることが沢山ありました。

卒業論文の研究テーマは?

「朝型と夜型に対する潜在的・顕在的認知と睡眠習慣および生体リズムとの関連」と題して検討を行いました。研究の結果から、夜型生活を送っている学生ほど「朝型を良い」と認知している可能性が示され、自身の生活に問題を感じつつも夜型生活から抜け出せずにいるという睡眠習慣上の問題の示唆につながりました。
元々は睡眠研究所の施設を用いた本格的な実験を予定していましたが、COVID-19の流行により中止となりました。そこで、3年次の演習系授業の中で自らがテーマとして取り組んでいた「朝型-夜型のイメージ」に着目した研究を発展させるとともに、データ収集をオンラインベースで出来るようアレンジし、再スタートとなりました。急な計画変更となりましたが、興味深い研究が出来たと思います。

社会学部 人間心理学科
(2021年3月卒業)

S.Y.さん

(2021年3月取材)