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2026.09.28

人間心理学科・石橋美香子講師らの共著論文が『European Early Childhood Education Research Journal』に掲載

石橋美香子 講師

江戸川大学社会学部人間心理学科の石橋美香子講師(専門分野:発達心理学)、学習院大学の高橋翠兼任講師、東京大学の野澤祥子特任教授らの研究グループは、保育施設の食事介助場面において、保育士の視線が子どもの「口」と「顔」の間をどのように移り変わるか(視線の遷移確率)を推定し、その結果、経験年数によって視線の動かし方が質的に異なること、とりわけ経験を積んだ保育士ほど子どもの口元から視線を逸らしにくいことを、1対1介助と1対3介助の両場面で明らかにしました。本研究成果は、国際学術誌『European Early Childhood Education Research Journal』に掲載されました。

■石橋講師のコメント
乳児期の食事は栄養を摂るだけの場面ではなく、自己調整や自律性、他者とのやり取りを育む大切な教育実践の場です。とりわけ離乳期の介助では、誤嚥を防ぎながら子どものペースを尊重し、安心できる雰囲気のなかで食事を行うことが保育士に求められます。スプーンで食べさせる際には、咀嚼や嚥下を見守るために子どもの「口元」へ注意を向けつつ、表情から子どもの状態を読み取るために「顔」にも目を配るという、柔軟な注意配分が必要になります。これまでのアイトラッキング研究は、保育士が「どこを」「どれくらい」見ているか(注視時間)が注目されてきました。しかし、視線を時間のなかで「どの順序で」「どのように」動かしているか——ある領域から別の領域へ視線を移す確率——という動的・連続的な側面は、ほとんど解明されていませんでした。

本研究は、この視線の遷移構造に着目し、保育士の経験年数が視線の動かし方にどのように表れるのかを視線遷移(マルコフ連鎖)分析を適用し、検討しました。経験豊富な保育士は、安全上もっとも重要な口元への注意を意識的に持続させ、不必要に視線を逸らさないという、質的に異なる視線の使い方をしている可能性が明らかになりました。本研究は、保育の専門性を「視線の遷移」という観点から可視化した点に特徴があり、保育分野ではまだ数少ない先駆的な研究の一つといえます。

本研究の実施にあたり、本学メディアコミュニケーション学部情報文化学科4年生の原田樟さん、そして森田千翔さんが、データコーディングやプログラミングを用いた図表作成等、様々なサポートをしてくれました。彼らの多大なる貢献に心より感謝します。なお、本研究は江戸川大学学内研究助成金、ならびに公益財団法人カシオ科学振興財団による助成を受けました。ここに記して感謝いたします。そして、保育士さんの貴重な視線データの提供に協力してくださった東京児童協会の皆様に心よりお礼申し上げます。