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国立公園研究所

国立公園写真エッセイ

「ヒグマがつなぐ知床の海と森」

<撮影・執筆者の情報>

国立公園:知床国立公園
所属:自然公園財団 知床支部
名前:島田莉穂(江戸川大学卒業生)
撮影年月日:2018.7.20
撮影場所:知床 ウトロ側観光船内

知床国立公園がある知床半島は長さ 70 km、横幅 20 ~ 25 kmと細長い。この半島に生活するヒグマは、山から海までの様々な場所を自由に利用しながら生きている。知床最高峰、羅臼岳の高山帯ではハイマツの実やキノコを食べ、森林ではアリやセミの幼虫がいる地面を掘って探す。海岸では打ち上がった魚や海獣の死骸を食べ、秋には海から遡上して来たサケ・マスを求めて川の河口にやってくる。
海岸で海獣の死骸を食べ、川でサケ・マスを獲るヒグマの姿は、知床ではおなじみの光景だが、“海岸付近を歩いたり、泳いだりするヒグマの姿”を観察できる場所は、ほかの地域ではまず思い浮かばない。山と海の間に道路や街などがなく、人との遭遇を嫌うヒグマでも自由に海岸まで出てこられる“知床だからこそ”なのだ。
またこの光景は、海岸や川に上がった海の栄養が森の中にももたらされていること、そしてその一端をヒグマが担っていることを思い出させてくれる。
その姿は“観光船に乗る”ことで適正な距離を保って安全に観察することができ、ヒグマにもストレスを与えにくい。オススメだ。