vol. 38 2017年1月23日

海外の大学院に進学、国際的な視野をもって地域の環境課題に取り組む

福田さんは社会学部現代社会学科で4年間環境学を中心に学びました。環境学は私たちを取り囲む自然と人間を中心とする学問で、机上の勉学だけでなく、現場に足を運ぶフィールドワークがかかせません。福田さんは在学中に国内外にわたる様々なフィールドワークやインターンシップを経験し、執筆した卒業論文は最優秀論文と評価されました。卒業後はオーストラリアの大学院への夢を果たし、モナッシュ大学大学院の国際発展と環境分析管理コースで学びました。そして、2016年12月大学院を修了し、環境管理と持続可能性修士号を取得しました。

大学院進学を選んだきっかけ、理由は?

江戸川大学在学中に国内外のボランティア活動やインターンシップを通して人間と自然の深い関係性を学び、それが環境問題だけではなく人間の文化や生活、経済にまで発展していることに気がつきました。そして大学最後の年に日光国立公園で働きながら、オーストラリアのアボリジニと国立公園をテーマに卒業論文を書いている際に、世界中の国立公園内における観光地としての発展、それに伴う環境破壊や原住民の文化衰退、地域への悪影響など身を持って実感し、それらの問題についてもっと広い視野で勉強したいと思い、大学院への進学を決めました。

大学院進学のためどんな勉強をしましたか?

大学院進学を決めた際に、自分の英語の実力がどの程度のものなのか分からなかったため、大学卒業後にアイエルツという英語の試験を受けました。その結果を元に語学学校へ進み、大学院進学準備コースというアカデミック英語を学ぶコースを数ヶ月とりました。やはりクラスのレベルが上がるにつれて内容も時事問題や環境問題を取り扱うなど、かなり専門的になりました。自分たちでトピックを決めて論文を書き、現地の人にインタビューをするという課題もありました。また日本の教育システムとオーストラリアの教育システムはかなり違っており、オーストラリアは様々な国から留学生が来るため、語学学校の授業もディベートやディスカッション、プレゼンテーションがとても多くクリティカル・シンキングをとても重要視していました。日本では比較的学生は受け身体制で授業を聞きますが、オーストラリアでは相手の意見やトピックについて自分の意見を述べるのが大事だと気づきました。

大学院での一年半はどんなふうに過ごしましたか?

大学院で過ごした時間は、今まで生きてきた人生の中でもっともこの世界について肌身を持って学んだ時間だと思います。それは授業からだけではなく、オーストラリアという場所で世界中から学生が集い、一緒に時間を過ごしていくなかで学生一人一人が自分の国の身近で起こっている環境問題や貧困を無くしたいという強い気持ちをひしひしと実感することができたからです。最初の学期は授業自体についていくのが必死で、毎日15時間以上椅子に座ってただただ課題をこなすのに精一杯で、あまり“学んでいる”という実感がありませんでした。しかしグループでの課題を通して他の学生たちの経験を聞き、教科書やテレビで見る環境破壊や貧困は身近で起きており、今こうしてクラスで学んでいることが実際に活かせるのだと気づくことがモチベーションになりました。
一学期で3つから4つのクラスを取るのですが、学校に行く時間よりも自主的な勉強やリィーデング、課題をやっている時間の方が圧倒的に多く、タイムマネジメントも私にとっては大きな課題でした。他の学生とのディスカッションや論文のなどの課題をするにあたって語学面でも苦労はありましたが、大学の勉強の合間に分からない単語などを調べてはノートに書き留めて英語の勉強していました。

大学院での研究テーマは?

私の学科は様々なコースから成り立っており、開発学や経済学、科学や観光学など幅広い観点から環境を学ぶことができ、改めて全て繋がっているのだということを学びました。大学院最後の課題としてグループ卒業論文を書いたのですが、その時のテーマは都市開発と持続可能なまちづくりでした。基本三原則となる社会、経済、環境の観点から都市の発展を調査し、中国、日本、シンガポールをケーススタディとして、都市発展がもたらす環境への影響や貧困の差などの問題点として挙げました。その他のクラスで印象的だったのは、ポストヒューマニティと自然というテーマの課題です。様々な学者が定義するように、科学の発展により人間とテクノロジーが一体化していくことで、今後自然や人間のアイデンティティはどうなっていくのだろうか?人間と自然環境との関わりはどう変わっていくのだろうかという趣旨の研究をしました。
このように人間と環境と言っても角度を変えて見れば全く異なった観点があり、それぞれのクラスで違ったことを学ぶことができるので、自分が国立公園で働いた時に感じた人間と自然という関係性から、今はもっと広い視野で物事を見ることができるようになりました。

大学院修了後は、どう進もうと考えていますか?

今はオーストラリアで就職するために新しいビザを申請中です。
今後は日本の国立公園で働いたという経験を生かし、オーストラリアの国立公園を管理するパークス・オーストラリアやパークス・ビクトリアに挑戦しようと考えています。
現在はボランティアとしてJunior Chamber International (青年会議所)のオーストラリア、イースタン地区の団体に所属しており、去年は日本とオーストラリアの架け橋として日本の姉妹団体とのコネクションを深めるために、書類の翻訳やメルボルン訪問をアレンジしたり、チームの一員としてマラリア撲滅のイベントや、子供達がアートを通して国際交流をするイベントなどに参加してきました。今年からは国際関係ディレクターに就任し、今後は日本だけではなくオーストラリアと他の国にある団体との繋がりを深める役割を担い、地域に貢献できるように大学院で学んだことを生かして生きたいと思います。

社会学部 ライフデザイン学科(現:現代社会学科)
2013年3月卒業

F.A.さん

2014年7月 ディーキン大学語学学校入学 (大学院準備コース)
2014年12月 ディーキン大学語学学校卒業
2015年7月 モナッシュ大学入学
2016年12月 モナッシュ大学卒業
環境管理と持続可能性修士
Master of Environmental management and Sustainability
国際発展と環境分析管理コース
International development and environmental analysis stream

(2017年2月取材)