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2018.02.13

人間心理学科・山本隆一郎准教授らの研究成果が日本睡眠学会の学術雑誌『Sleep and Biological Rhythms』に掲載

児童の日中の眠気には、「睡眠の質」「平日の就寝時刻」「週末と平日の就寝時刻差」が関連

江戸川大学社会学部人間心理学科山本隆一郎准教授(臨床心理学)らは、小学生児童を対象に睡眠に関する調査を実施し、「児童の日中の眠気」には、「睡眠の質」「平日の就寝時刻」「週末と平日の就寝時刻差」が関連していることを見出しました。

本研究成果は、日本睡眠学会の学術雑誌『Sleep and Biological Rhythms』( 2018 年 1 月 29 日:Online First)に掲載されました。
なお、本研究は上越教育大学プロジェクト研究( 2014 年度- 2015 年度)、日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究 B( 16H03247 )の助成を受けて実施されました。

【研究成果の要旨】
児童の日中の眠気は、学校生活の質や学業成績、心身の健康と関連しています。日中の眠気の背景には、「よい睡眠」が得られていないことが背景にあることが経験的にも言われていますし、実証研究においても報告されています。
しかしながら、「よい睡眠」と言っても、児童の睡眠のどのような側面がどの程度日中の眠気と関連しているかという具体的な報告はこれまでにありませんでした。

そこで、本研究では、睡眠を「質(睡眠障害の疑いの有無)」、「量(平日・休日の睡眠時間)」、「位相(平日と休日・休前日の就寝・起床時刻ならびに平日と休日・休前日間の就寝・起床時刻の差)」の 3 側面に分類し、それらを同時評価した上で、
日中の眠気の説明力の違いを検討しました。

本研究では、新潟県上越市都市部(旧上越市)の児童とその保護者に対して大規模な質問紙調査を実施し(有効回答:1134名)、睡眠の質・量・位相と日中の眠気との関連をロジスティック回帰分析により検討しました。

その結果、睡眠の量はモデルに投入されず(注 1 )、「睡眠の質が悪いこと」、「平日の就寝時刻が 21:30 以降であること」、「平日よりも週末の就寝時刻が遅いこと」、「平日よりも週末の就寝時刻が早いこと」が日中の眠気と関連していることが見いだされました。

本研究の成果から、(1) 睡眠教育において児童の日中の眠気対策をするためには、単に「睡眠は大事なのでたくさん眠りましょう」という目標ではなく、「平日と週末で就寝・起床を一貫化させましょう」という目標が重要であること、(2) 学校保健の場において、きちんと”寝て”いても”しっかり眠れない”または“眠りが妨げられている”児童を発見し、対策を講じることが重要であると考えられます。
本研究は、今後の学校保健における睡眠教育や睡眠保健活動の基礎資料となることが期待されます。

(注 1 )本研究の成果は、睡眠時間と日中の眠気との間に関連がないということを報告しているわけではありません。今回の調査対象者の多くが、当該年齢段階に必要とされる睡眠時間を確保できていました。このことから、児童間の睡眠時間の個人差が日中の眠気の個人差を説明しなかったと考えられます。集団の健康を扱う学校保健・公衆衛生の観点から児童の日中の眠気対策を検討する際には、睡眠の質や位相の側面に留意することが特に重要であると考えられます。

発表者
江戸川大学 社会学部 人間心理学科 准教授
山本隆一郎

論文情報

Shintaro Hara, Ryuichiro Yamamoto, Miki Maruyama, Reiko Hojo, & Shinobu Nomura "Relationships between daytime sleepiness and sleep quality, duration, and phase among school-aged children: a cross-sectional survey", Sleep and Biological Rhythms, doi:10.1007/s41105-018-0148-8

<参考リンク>

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