江戸川大学では、3年次に所属したゼミナールで専門研究を行い、4年次には卒業論文を執筆します。各ゼミの指導教員は卒業論文のうち優秀な論文を優秀論文として推薦します。優秀論文発表会では、優秀論文を執筆した学生がプレゼンテーションを行い、最も優秀な論文が選考されます。

2017年度 優秀論文

最優秀論文
「児童養護施設における自立支援に関する実態と課題」
田嶋亜美さん(山路進ゼミ)

<論文概要>
本論文は、「児童養護施設における自立支援に関する実態と課題」をテーマとし、 以下の4つを研究の目的としている。
(1)自立支援の取り組みの歴史、自立支援の定義を明らかにすること。
(2)児童養護施設の自立支援の取り組み状況を明らかにするとともに、自立支援コーディネーターが置かれている東京都と置かれていない県の施設に違いがあるのか調査する。
(3)社会的養護の当事者の視点から見て、どのような支援が必要なのか、実際に支援を受けて どう影響したのかを明らかにする。
(4)学生が施設実習をどのように考えているのか、自立支援についてどれほど意識があるのか明らかにする。

(1)については、文献研究を行った。自立支援の定義、自立支援の種類や方法、自立支援の歴 史は文献研究を行った。(1)の知見と先行研究を元に(2)~(4)のインタビュー項目とアンケー卜項目を作成した。(2)は、5箇所の東京都にある児童養護施設と、5箇所の東京都近県の児童養護施設で職員にインタピューを行った。インタビューの結果からは、自立支援コーディネーターが置かれたことにより、東京都の施設では情報共有ができ、自立支援に関わる底上げができていると いうことがわかった。東京都以外の施設では、東京都に自立支援コーディネーターが置かれたことに影響され、各県で自立支援事業を強化する動きが見られた。
(3)については、児童養護施設を卒園した当事者1名にインタビューを行った。当事者から生の声を聞くことで、当事者が何を求めているのか、どんな支援が必要なのか明らかになった。自立支援を考えた時に、職員が一方的に必要だと思うことを支援するのではなく、子ども本人と一緒に何が必要なのか、何を必要としているのかを考え支援に当たることによって、子どもに寄り添った支援に繋がるということが明らかになった。
(4)については、施設実習を行った学生に施設実習や自立支援についてのアンケートを実施した。アンケートの結果から、学生に自覚が足りないことや、今後の社会的養護の現場を担っていく者に必要なのかが明らかになった。そして、学生には知識以前に、保育士として の意識がまだまだ低いことが分かった。また、大学のカリキュラムの中で保育所以外の施設のことをもっと多く学ぶ必要があることが分かった。
保育所実習以上に施設実習では自分が子どもに与える影響を十分に理解し、実習での意欲・態度を向上する必要があることが考えられた。

<選考のポイント>
本学科では卒業研究は初めての事であり、各研究室ではしっかりとした指導がなされどの研究発表もレベルの高いものであり、本研究が特に優れていたわけではない。田嶋さんの研究は、先行研究をしっかりと読み込みその中から課題を見つけ仮説を立て、社会教育施設を10か所と退所者に対してインタビュー調査を実施し、考察を加えた地道な基本通りの研究である事が評価されたのであろう。

優秀論文
「幼児期の子どもの英語教育について―考察―遊びをとおして英語を知る幼児(5歳児)との英語活動の実践をとおして」
小池杏佳さん(城一道子ゼミ)

<論文概要>
筆者のグループ(選択科目「Communicative Activities I・II・III」を履修した学生のグループ)では、3年前から流山市A保育園の5~6歳児を対象に英語活動を実施してきたが、それまで学習してきたことや経験を踏まえ、平成29年5月18日から11月2日まで、自主的にレッスン・プランを作成し、英語活動を行ってきた。本稿は、その取り組みと成果を報告するものである。
レッスン・プランには、絵本や歌、チャンツなど様々な教材を取り入れた。絵本や歌は幼児教育現場でも多く取り入れられており、子どもたちにもなじみがあり、幼児の環境を構成する一部としても重要である。このような、英語が分からなくても、視覚的、聴覚的に親しみやすい教材を使用することで、子どもたちの興味や関心が高まり、英語そのものにも親しみをもてるようになると考えたからである。

作成したレッスン・プランをもとに活動を行い、指導者としてまた参与者として参加し、その活動の様子を観察記録(フィールド・ノーツ)に記録した。観察記録のデータをもとに特に印象に残ったエピソードを中心に英語活動の取り組みの意義を考察した。
指導者として、活動を行い、観察を行い、記録をつけることで、子どもが何かをできるようになる過程をより明確に見ることができた。子どもの近くに座っていると、絵本“Good night moon”では、熊が3匹座っている絵をみて「スリーベア-」と言ったり、月の位置が変化していることを知り、「ねずみがジャンプして月を持ち上げたんじゃない?」と、ねずみが窓の近くに立っているのを見て言ったりする姿を見て、子どもだからこその想像力を垣間見たり、子どものつぶやきを聴き取ったり、多くの発見があった。
そして、そしてなにより活動をとおして子どもの成長を見ることができることに面白さを感じるようになった。英語活動をとおして、その目的は、英語を学ぶことではなく、英語が楽しいと感じられることによって、新たな言葉として発見を促し、子どもたちの興味や関心の幅がひろがるきっかけになることにその意義があると思う。

<選考のポイント>
自身が参加した英語活動の実践研究として、その努力の成果が見られる論文である。観察をとおして拾い上げられたエピソードは、いずれも興味深く、対象の5~6歳児の発達的特徴をよく捉え、入念な考察を加えながら丁寧にまとめられている。活動の準備から実施まで人知れず活動を支えたことが、論文となって結実したと言えよう。

その他の優秀論文は以下のとおりです。
宮沢賢治「銀河鉄道の夜」論 入鹿山皓子さん(氏原基余司ゼミ)
運動部に所属している高校生の睡眠について 佐藤恵美さん(守屋志保ゼミ)
きょうだい構成と性格の関係についての一考察 錦戸咲さん(大塚柴乃ゼミ)
アメリカの障害児教育の歴史について~ミネソタの障害児を対象として~ 山田麻鈴さん(宮崎孝治ゼミ)
ジュニア期のバスケットボール指導における指導者の指導哲学~指導者の重要性について~ 若松優津さん(松田清美ゼミ)