江戸川大学では、3年次に所属したゼミナールで専門研究を行い、4年次には卒業論文を執筆します。各ゼミの指導教員は卒業論文のうち優秀な論文を優秀論文として推薦します。優秀論文発表会では、優秀論文を執筆した学生がプレゼンテーションを行い、最も優秀な論文が選考されます。

2017年度 優秀論文

最優秀論文
「会計業務への人工知能の導入とその影響について」
富澤菜緒さん(小田原由佳ゼミ)


<論文概要>
近年、日本企業の不正会計問題が報道で大きく取り沙汰され、話題に上っている。増え続ける粉飾決算・不適切な会計処理を根絶させるためには革新的なアプローチが必要であり、本論文では会計業務への人工知能の導入を一つの手段として注目した。人工知能を活用することで会計業務の膨大な単純作業から解放されるだけでなく、誤謬を大幅に減少させることができるだろう。しかしながら、人工知能の持つ欠点を鑑みると、人の手を完全に排除し業務を完全自動化するのは難しいだろう。更なる会計業務の発展および不正会計防止の強化のためには、人工知能と共存する体系の構築と理解が必要不可欠であると考える。

<選考のポイント>
本論文は、近年、問題視されている「日本企業の不正会計問題」にフォーカスし、これらの不正会計問題の発生要因とその対応策について調査研究し、不正会計を防止するための一つの方策として、会計業務に人工知能(AI)を活用することの優位性と課題について考察を深め、その可能性と実現性について提示することを目的としたものである。論文全体を通して、体裁を含めた記述方法はもちろん、論点の展開の仕方など申し分なく、非常に高い評価に値する論文であるとされた。

優秀論文
「アミューズの成功要因に関する一考察」
廣田祐貴さん(八木京子ゼミ)


<論文概要>
これまで、100年以上の長きにわたり、音楽産業はレコードやCDなどを製造し、販売するビジネスモデル「パッケージ・ビジネス」を中心に繁栄してきた。しかし、社会経済のグローバル化や消費者行動の変化に伴い、このビジネスモデルが崩壊し、音楽産業全体が縮小傾向にある。このように、産業全体が縮小を続ける中で急成長を遂げているのが、アーティストのマネジメントなどを主に行うマネジメント会社である「株式会社アミューズ」(以下、アミューズ)である。
そこで、本論文において、アミューズの成功要因を明らかにすることを目的とし、さまざまな分析や考察を行ったところ、アミューズは顧客の音楽の楽しみ方がCDなどの音楽メディアを介したものから、ライブやコンサートなどで体感するものへと変化していることを的確にとらえ、主要ビジネスモデルを「アーティスト」を中心に多角化ビジネスを展開する「360度ビジネス」へと移行したことにあると分かった。また、今後はこのビジネスモデルの中核となる「アーティスト」をいかに保有していくかが重要になるとの課題および、展望を提示することができた。

<選考のポイント>
近年、低迷を続ける音楽産業の中でも成長著しいマネジメント会社「株式会社アミューズ」に着目し、音楽産業の歴史やビジネスモデルの変遷、アミューズの事業内容について詳しく分析することによって、アミューズの成功要因を明らかにしたことが高く評価されました。また、発表会では本研究の背景や研究の目的、研究結果までが論理的にプレゼンされ、質疑応答でも非常に活発なディスカッションが行われました。

佳作
「自治体による一般廃棄物の処理についての一考察:千葉県柏市の家庭系ごみを例にとって」
黄 卓乾さん(金田正明ゼミ)


<論文概要>
自治体がかかえる一般家庭ごみの処理問題について、千葉県柏市を例に問題点を明らかにし、考察を加えた研究である。目的検証のため、「行政や住民のごみ減量化への取り組は、家庭系ごみの排出量削減に寄与している」という仮説を立てた。柏市への聞き取り調査及び実際のデータに基づき分析を試みた。柏市では一般家庭ごみの減量化の為、複数の条例を定めて、3Rの徹底を住民に呼びかけてきた。結果、例えば年間1人当たり家庭系可燃ごみの排出量は、2011年に 153kgであったが、2015年には129kgとなり16%減少している。この結果、上記の仮説は受容された。更なるごみ減量化には、厨芥類と紙類をいかに削減するかが課題である。

<選考のポイント>
黄さんは、柏市の担当部署へ10回以上の聞取り調査を行いました。大量の資料を基に自分で図表を作りました。本文も、日本語のハンディーがあるなか、10回以上も修正を繰り返して自分の言葉で書きました。コピペや切梁はありません。仮説を設け、それを検定する形で結論を導き出しています。先行研究も行い、注で資料の出所も明記しました。

佳作
「「憧れ」による消費行動の実態と今後に関する考察」
花泉百香さん(中口哲治ゼミ)


<論文概要>
近年、有名人が発信した情報が引き金となりファッション商品を購買するという「憧れ」消費が拡大している。かつて「憧れ」の発信源は、モデルや芸能人が中心であったが、最近ではブロガー、インスタグラマー、友人など身近な人物に移行しつつある。本論文では、こうした「憧れ」消費がSNSの広がりによって構造的な変化を起こしているのではないかとの仮説を立て、「憧れ」消費の定義、歴史的経緯、さらに実態解明に向けたアンケート調査を実施した。結果として「憧れ」消費は、高級ブランドより身近なブランドの方が出現し易い、公式モデルや芸能人よりもSNS上の人物からの影響が強いという知見が得られ仮説は概ね支持された。本論文を通じて「憧れ」消費は、SNSなど身近かつ情報量(頻度)の多いツールを上手に活用した人物の影響を多分に受ける消費スタイルであることを確信した。

<選考のポイント>
「憧れ消費」という消費財マーケティングの大テーマを扱った論文である。
主題の日本における歴史的経緯やパーソナルメディア全盛時代の状況についても整理されている。検証すべき仮説を設定した上で、アンケート調査で収集した一次情報を丁寧に整理・分析し、分かり易く説明している点、結論から導き出された知見を高く評価した。

その他の優秀論文は以下のとおりです。
鉄道の発展に関する研究 高橋駿さん(安田英土ゼミ)
喫茶店ビジネスに関する基礎的研究-いま喫茶店に求められているもの- 高橋朱子さん(藤澤研二ゼミ)
日本の食肉消費動向における国産黒毛和種の消費動向の考察-今後、国産黒毛和種の需要動向を高めるには- 神田龍さん(広岡勲ゼミ)
物流産業の考察 カン イさん (菫光哲ゼミ)
沖縄県の FC 琉球がJ1に上がるには 眞榮城由季さん(鈴木秀生ゼミ)
茨城県水戸市の観光都市としての魅力、将来性 白田直人さん(小林至ゼミ)
年代別ミスプレー発生場所・種類に関する研究-高校生・大学生のゲーム分析を基に- 村田孝汰さん(青木拓郎ゼミ)