▼クラブとディスコの違い
 今回は、「クラブ?ディスコ?」なんですが、最近新しくオープンしたクラブはどれもディスコっぽいですね。まずそもそも、クラブとディスコの違いは何なんでしょうか。これには様々な説があります。
 1つ目は、法律的な分け方です。
 ディスコというのは、「風俗営業等の規制および業務の適正化に関する法律」に規定されている風俗娯楽施設で、分類は「第二号・ナイトクラブ」になります(分類番号が小さくなると許可承認が難しくなります)。ですから、風俗営業許可申請の際には「ナイトクラブ営業許可申請」になります。この風営法概念上の「ナイトクラブ」というのは、簡単に言えば「店が酒類を提供し、客を躍らせる娯楽施設」と定義されています。つまり、「店が所有する業務内容」として、酒を作って客に出し、またDJを雇って曲をかけて客を躍らせる場所、ということです。
 この「第二号・ナイトクラブ」は、営業許可がとりにくいことと、取締りが厳しい点が挙げられます。しかし許可がとりにくいといっても、とれないわけではありません。ただ、承認される際に、かなり店側に不都合となるような条件をたくさん付けられてしまいます。(参考:パート、アルバイトも含む総従業員名簿の作成と、それを当局に提出することなどが必要)
 これに対してクラブというのは、風営法上の分類では「第五号・喫茶店、バー(甲)」と定義されます。この定義は、暗い照明の下で客に酒類を提供する場所、となります。クラブもDJがいて、音楽がかかっていて、踊れますが、「店が用意したものではない」のです。
 つまり、店はイベントを行うためのレンタルスペースなのです。酒類を取り扱うため風営法上の許可が必要ですが、スペースの中で、つまり店の中で行われることは、公序良俗に反した内容でない限り、店としては責任がないのです。
 ですから、イベントオーガナイザー(イベントの主催者)が店の内装品のレイアウトを変えて客席を極端に減らして、店の真中に大きなスペースを作ってDJにガンガン音楽をかけさせても、「第二号・ナイトクラブ」であるディスコではないんです。だから毎日イベントばかりなんです。毎日内容が違うんです。
 しかし、毎週レギュラーでやってるイベントもあります。明かに店がやっているとしか思えないイベントですね。これは、店がダミーのイベント会社を便宜的に作っていたり、また、店の所有会社が、イベント事業部を作っていたりします。ですから、店自体はなんら関係がないということになります。
 簡単に言えば、毎日同じ内容で営業できるのがディスコ、毎日違う内容でしか営業できないのがクラブ、ということです。あれ?一言で済んじゃいましたね。
 もう1つは、見た目の雰囲気による分け方です。
 内装がゴージャスでバブリーで、かかっている曲がずっとダンスクラシックス、ユーロビートならディスコ。内装がモードちっくであったり、シンプルであったり、場合によってはコギタナくて、かかっている曲が時間によって変わっていって、クールでかっこ良さげならば、クラブ。なんともあいまいですいません。結論としては、どっちもあんまり変わらない、ということです。気にせず遊んでください。
 蛇足ですが、僕の考えるクラブは、いい曲とおいしいお酒があって、プラス「そこにカルチャーがあるところ」です。ただ楽しいだけではそれこそただの「遊興場」で終わってしまいます。
 カルチャーといってもわかりにくいでしょうから他に例えて説明しましょう。 例えば、ヒップホップ。70年代初めにニューヨークのダウンタウンで発生した黒人文化です。ヒップホップとは、ラップの事だけを指すものではなく、今や黒人文化そのものといえます。かいつまんで説明すると、ヒップホップカルチャーは3つの側面があります。まず音楽的な表現は、ラップを基調とする(アフリカ系)黒人独自のナマリを生かした新しい音楽ジャンルを開拓しました。ビジュアル的な表現は、ブレークダンスをはじめ、音楽に合わせた独特なダンス手法(バックビートを取りながら踊る)を確立させ、そして発展させてきました。これは動的ビジュアル表現といえます。もう1つの表現は、スプレーペイントに代表されるアート的側面。これは静的ビジュアル表現といえます。これらの、音楽、動的ビジュアル(ダンス)、静的ビジュアル(アート)などが、シナジー(相乗効果)を生みヒップホップは発展してきました。
 クラブも今や「遊びの中の1つ」という、カテゴリーを打ち破り、積極的に成長を続けています。音楽シーン(メジャーなヒットチャート)にだけでなく、ファッションや、ライフスタイルにまでも影響を及ぼしています。
 みなさんもぜひ「クラブカルチャー」を体験してみてください。
 実はクラブとディスコの違いについてなどというコアな題材なんて、誰も興味が無いだろうと思っていました。僕的にも、「別にクラブであろうがディスコであろうが、そんな事はどうでもいいんじゃない。」と思っていました。この日本という独自のプラットフォームにおいて、既存の枠に当てはめる---カテゴライズなんてあまり意味が無いかな、と思っていました。
 しかし純粋に素朴な疑問はみなさんお持ちのようです。「クラブ」、「ディスコ」、どちらも踊る場所として一般に認知されています。しかしこの両者には厳密な違いが有ります。それは本場のUSやヨーロッパでの両者の違いも、そして日本独自の両者の違いもあります。まずはクラブとディスコのルーツを簡単に紹介します。
 まずは分かりやすいディスコからです。このディスコのルーツはキャバレーです。いまどきキャバレーなんて知ってる人はもう少ないのではないでしょうか。日本では昭和40年代ごろに全盛を極めた水商売(風俗娯楽店)の形態です。50歳ぐらいの元遊び人(もしくは現役)の方が身近にいれば、当時のキャバレーの様子を聞いてみるといいでしょう。
 この形態のお店の特徴としては、豪華な内装や調度品が揃い、そしてショーや生演奏ができるステージがあり、その方向に向かって客席がセットされています。
 そして後方(もしくはステージの目の前)にダンスフロアーがあり、そこで客は踊る事ができます。洋画などでは今でもよく見かけますので、なんとなくイメージはできるのではないでしょうか。
 日本においてのキャバレー文化では、ダンスはサンバ、ルンバ、タンゴ、チークといったものが当時人気だったようです。現在ではショーパブがこの流れを受け継いでいるといえるでしょう。
 このキャバレーはもう今となっては絶滅寸前となっています。しかし現在でもホスト系クラブではこのキャバレーの流れを受け継いでいるところは多く見うけられます。特にライトな料金システムでOLに人気の「サパー」がこれに近いでしょう。
 このキャバレーの小箱を指してアメリカで「discotheque」といわれていました。このdiscotheque(ディスコティック)を縮めて「ディスコ」となったのです。小箱だと大掛かりに有名人を呼んでショーなどをやる事は経済的に難しく、かといって店内が静かだと客は寄りつきません。そこで演奏をかけて客を躍らせる事をメインに経営していく事が最も合理的となります。
そして、ゆったりとくつろぐ所をキャバレーと呼び、踊りに行く所をディスコと区別するようになったのです。ですからディスコの店内はコンセプト的にも、ゴージャスできらびやかなものになるのです。このディスコのルーツや定義ははっきりとしており、この発生経緯が唯一無二のものとなっています。
 明確なルーツを持つディスコとは対称的なのがクラブです。この現在のクラブのルーツには諸説入り乱れているのが実情です。クラブ発生の経緯は大きく分けてデトロイト説、シカゴ説、ニューヨーク説に分かれます。
 まずはデトロイト説から紹介します。デトロイトはアメリカのイリノイ州南部にある世界有数の自動車産業の盛んな街です。この街の労働者の多くは主要産業の自動車工業に従事していました。毎日朝から晩まで油まみれになりながら、安い賃金で過酷な労働を余儀なくされていました。1980年代に入るとアメリカは深刻な不況に見まわれ、失業率は上昇する一方でした。
 この過酷な毎日の生活の中でほっと一息つける時というのは、やはり仕事の後の一杯を飲む時です。工場近くの安酒場は毎日労働者であふれかえっていました。
 しかし毎日のストレスは安酒をあおるぐらいではすんなり解消されません。狭いバーで踊るとすぐに客同士でケンカが始まります。かといってナイトクラブで遊ぶお金もありません。そこで彼らはどこか自由に飲んで踊れるような場所を自分達で作ろうと思い立ったのです。
 思いもよらず、すんなりとその場所は見つかりました。彼らが毎日働いている工場の空きスペースです。この仕事が終わって誰もいなくなった自動車修理工場を、彼らは仕事の後の楽しみとして使うようになりました。
みんなが思い思いのレコードをかけ、酒を飲み、踊り明かしていたのです。これがデトロイトで始まったとされるクラブの原型です。当初は労働者の大半を占めていた黒人の好みによって、ソウルが全盛だったようです。そして宴を重ねていくごとに、より踊る事を目的とした音楽のアレンジを考える人達が出てきました。自分達の馴染みの有るソウルをベースに、リズムの取りやすい音楽を作り出していったのです。これがハウスミュージックの始まりです。こうして一部の労働者の楽しみとなっていた工場での宴は次第にうわさを呼び、参加人数も増えていきました。すると今までの工場でも手狭になってきました。そこで彼らは場所を工場から倉庫に移しました。倉庫ならばかなりの人数が収容できますし、大きな音で音楽をかけても誰の迷惑にもなりません。
蛇足ですが、ハウスミュージックは当初ガラージと呼ばれていました。英和辞典を引けば分かると思いますが、garageの訳には自動車修理工場という意味も有ります。つまり、自動車修理工場で生まれた音楽なのです。またハウスミュージックのハウスとは、warehouse(倉庫)から来ているとも、踊る場所を「house」と呼んでいたからとも言われています。
 次にシカゴ説、ニューヨーク説ですが、この両方は場所の違いは有るのですが内容はほとんど同じです。キャバレーから派生した会員制ナイトクラブがルーツと言われています。シカゴ、ニューヨーク共にアメリカきっての大都会です。都会の洗練された遊び場の進化形としてナイトクラブから発展して現在のクラブとなったという説です。
現在のクラブの店舗形態のルーツからすると、この説が一番説得力があるでしょう。
ドライに分析してしまうと、現在のクラブはハイブリッドであって何か1つのものだけを唯一の根源に持つものではない、と結論付ける事ができるのではないでしょうか。
 このように、ディスコとクラブはルーツ、ヒストリー的には全く違ったものです。しかし現在ハイブリッド化が進んでいる中では、この両者の違いはあいまいになってきていると言えるでしょう。クラブのディスコ化は時代の流れです。一昔前などではクラブでミラーボールが回っているなど考えられませんでしたが、今では照明などのビジュアル面にどこもかなり力を入れています。
 クラブとディスコは、ルーツやヒストリーの違いはありますが、「酒を飲み、踊る」という人間の本能的欲求を満たす場所という大きな共通部分があります。それ故、おのずと違いはあいまいになってくるのではないでしょうか。
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